区画整理110億円不足、住民数百万ずつ負担も…奈良
奈良県香芝(かしば)市で旭ヶ丘ニュータウンを造成している「旭ヶ丘土地区画整理組合」(松原一夫理事長)がバブル経済崩壊の影響などで約110億円の不足金を抱え、今年2月、金融機関に債務の減免を求めて奈良簡裁に特定調停を申し立てたことが30日、わかった。
事業はほぼ完了し、約4900人が暮らしているが、不足金はマイホームを購入した住民を含む組合員が負担するため、新住民約300人が数百万円ずつ支払わなければならない可能性が高いという。
市街地整備などのための組合主体の土地区画整理事業は全国で約900件進められているが、国土交通省は「特定調停申し立ての例はほとんどない」としている。
事業は1984年、山林など78ヘクタールの地権者約250人が組合を設立し、スタート。地権者それぞれが約半分の土地を提供し、売却して事業費にあてる「保留地」などにして、残りを地権者所有地として振り分けた。
約152億円の事業費で90年に完成の予定だったが、バブル崩壊で保留地の価格が4分の1程度に下落し、売れなくなった。このため、工期が延び、事業費は約300億円、借入残高は125億円になり、残っている保留地(約3万平方メートル)を売却しても約110億円の不足金が生じるという。
組合の定款などによると、仮換地された土地を購入すると自動的に組合員になり、不足金は組合員約1290人が分担する。「不足金の売り主負担」の売買契約を結んだ住民は支払う必要はないが、約300人がこうした契約を結んでいないとみられる。
組合によると、不足金は、減免されなければ3・3平方メートル当たり8—9万円。土地区画整理法によると、徴収には差し押さえなどの強制力がある。4月初めに開かれた組合主催の説明会では、住民から「知っていたら絶対に買わなかった」「子供が2人いて家のローンが残っている。とても払えない」などと抗議や怒号が飛び交った。
事業認可した奈良県や香芝市は「約30億円の補助金を出すなど支援しており、あとは組合の自己責任」としている。
◆特定調停=債務者の負担を軽減するための制度。簡易裁判所で調停委員の立ち会いのもと、債権者と返済額を交渉、債務の減免を促す。事業を継続しながら再建を進められる。
読売新聞より
コメント
返済を抱えた住民にとっての負担は、やはりきついですよね。
物件購入に際しての調査がますます必要な時代に。